お気に入りのソファを置き、カーテンも新調し、部屋は綺麗に片付いている。それなのに、なぜかモデルルームや素敵なカフェのような「雰囲気」が出ない…。
もしあなたがそんなふうに感じているなら、その原因はインテリアではなく「照明(あかり)」にあるかもしれません。
日本の住宅で長らく一般的だったのは、部屋の中央に大きなシーリングライト(吸い付き灯)が一つだけ、というスタイルでした。スイッチを入れれば部屋の隅々まで均一に明るくなる。確かに機能的で、作業をするには最適です。
しかし、この「影のない均一な明るさ」こそが、空間をのっぺりと平面的に見せ、どこか事務的な雰囲気にしてしまう正体なのです。
リフォームを機に照明計画を見直すことは、単に古くなった器具を新しくすることではありません。それは、光と影を操り、空間に「奥行き」と「リズム」を生み出す魔法をかけること。
今回は、プロが実践している照明テクニックをご紹介します。
空間に深みを与える「一室多灯」のセオリー
いま、リビング照明のトレンドであり、最もおすすめしたいのが「一室多灯(いっしつたとう)」という考え方です。
これは、部屋全体を一つの強力なライト(全般照明)で照らすのではなく、ダウンライト、スポットライト、ブラケットライト、フロアランプなど、役割の異なる複数の小さなあかりを組み合わせる手法です。

▲壁面を照らすことで、実際の畳数以上の広がりを感じられるリビングに。
ポイントは「床ではなく、壁を照らす」こと
例えば、テレビ背面の壁や、ソファ後ろの壁を照らす間接照明(コーニス照明など)を取り入れてみてください。人間の目は、垂直面(壁)が明るいと、空間全体が実際よりも広く、明るく感じる性質があります。
壁面に柔らかなグラデーションが生まれることで、空間に物理的な奥行き以上の「深み」が生まれ、まるでギャラリーのような上質な空気が流れます。
体内時計を整える「調光・調色」の科学
照明リフォームで必ず導入していただきたいのが、「調光(明るさの調整)」と「調色(光の色の調整)」の機能です。これは単なる演出ではなく、健康的な暮らしに直結する機能だからです。
人間の体は本来、太陽の動きに合わせて体内時計を調整しています。
- 朝〜昼: 活動的な「昼白色(ちゅうはくしょく・約5000K)」の光を浴びて、交感神経を優位にする。
- 夕方〜夜: 夕焼けのような「電球色(でんきゅうしょく・約2700K)」の光の中で、副交感神経を優位にし、リラックスする。

▲シーンに合わせて光の色温度を変えることで、暮らしのリズムが整います。
しかし、夜になっても昼間のような青白い光の下にいては、脳が覚醒したままになり、睡眠の質が低下してしまいます。
最新のLED照明なら、朝の身支度や子供のリビング学習時は「文字が読みやすい白く明るい光」に。夕食後の団らんは「キャンドルのような温かい光」に重心を下げて…といった切り替えが、スマホやリモコン一つで可能です。
「光の色」を変えるだけで、同じリビングが「活動の場」から「癒やしの場」へと瞬時に表情を変えるのです。
光のリフォームは、人生を豊かにする投資
大規模な間取り変更をしなくても、照明を変えるだけで部屋のグレード感は格段に上がります。
天井をすっきり見せる「グレアレス(眩しさを抑えた)ダウンライト」の配置や、建築と一体化して天井を高く見せる「コーブ照明」。これらは、配線工事を伴うリフォームだからこそ実現できる、プロの技です。
美しいあかりの下では、料理はより美味しそうに見え、肌の色艶も良く見えます。自然と会話が弾み、家族と過ごす時間がより愛おしいものになるでしょう。
「早く家に帰りたい」「リビングで過ごす夜が一番好き」。
そう思える空間づくりは、これからの人生を豊かにする、最もコストパフォーマンスの高い投資ではないでしょうか。


























